主人公が何もできないのに、なぜかうまくいく。そういうアニメだ。

「嘆きの亡霊は引退したい」の主人公・クライ・アンドリヒは、特別な能力を持たない普通の人間だ。でも彼が率いるパーティ「嘆きの亡霊」のメンバーは、とんでもなく強い。天才的な剣士、圧倒的な魔力を持つ魔法使い、規格外の回復師——どのメンバーも単体で十分すぎるほどの実力者たちだ。なのにそのリーダーを務めているのが、戦闘能力ゼロのクライだという設定が、このアニメの全ての面白さの根っこにある。

クライ本人は常に「早く引退したい」と思っている。強いメンバーに囲まれながら、どうにか場を収めようと必死に言葉を選ぶ。それっぽい言葉で誤魔化したり、宝具と呼ばれる道具の力を借りたりしながら、周囲を煙に巻いていく。その言動がなぜか仲間には「さすがリーダー」と解釈されてしまう。このすれ違いのテンポが毎話最高に面白い。

このアニメが特に面白いのは、クライが意図していない行動が後から重要な意味を持ち始めるところだ。適当に言った言葉が伏線になっていたり、特に深く考えずにとった行動が、気づいたら局面を打開する鍵になっていたりする。「あの時のあれがここに繋がるのか」という発見の快感が毎話あって、次の展開が読めないまま引き込まれていく。

強さで解決するのではなく、知恵とハッタリと偶然が組み合わさって物語が進んでいく構造が珍しくて新鮮だ。パーティメンバーが本当に強いからこそ、クライの「何もしていないのにうまくいく」状況がより際立つ。真剣にやっているのに笑えて、笑えるのに物語として面白い。そのバランスがこのアニメの魅力だ。

チートな能力を持つ主人公が無双する作品が多い中で、能力ゼロの主人公が強いメンバーを引き連れて活躍(?)するという逆転の発想が新鮮で、見始めたら止まらなくなった。

1期(2024年秋)・2期(2025年秋)放送済み。dアニメストア・ABEMAなどで視聴できる。