📋 目次

  1. 記憶がないまま憎まれるという状態
  2. 恐怖だけが残るという残り方
  3. 強化できないものの前で、レインは何ができるのか

第3話は、リリィという少女が抱えているものの形がようやく見えた回だった。結論から言えば、彼女が背負っているのは罪ではない。罪があるのかどうか自分でも分からない、という状態である。これは罪悪感よりはるかに始末が悪い。

2年前、リリィは姉のように慕っていた人物と仲間たちを連れて、伝説の剣を目指してガドレーザの遺跡に挑んだ。結果は失敗で、生きて戻ったのは彼女一人だった。そして残ったのは恐怖の感覚だけで、そこで何があったかの記憶は欠けている。以来、彼女は戦えない。街で再会したマーガレットという女性は、その遺跡で姉を亡くした遺族で、リリィが仲間を見捨てて逃げたのだと信じている。レインはリリィのために真実を確かめる道を選び、もう一度あの遺跡へ向かうことを決める。

記憶がないまま憎まれるという状態

マーガレットの怒りに対して、リリィが取れる態度が一つもない。ここが残酷だ。

見捨てていないと言い返すには、見捨てていない記憶が必要になる。ごめんと頭を下げるには、何に対して謝るのかを把握していなければならない。リリィにはどちらもない。だから否定もできず、謝罪もできず、ただ立っていることしかできない。憎まれる側に回ったとき、人は普通「反論する」か「受け入れる」のどちらかを選べる。彼女はその選択肢の手前で止められている。

しかも厄介なのは、マーガレットの推測が当たっている可能性が消えていない点だ。リリィ自身にも否定する根拠がない。自分が最低の人間かもしれないという疑いを、2年間一人で抱えてきたことになる。戦えなくなったのは体の問題ではなく、ここから来ているのだと思う。

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恐怖だけが残るという残り方

記憶の欠落の描き方として、恐怖だけを残したのが効いている。全部忘れていれば、彼女はただ元気に暮らせていた。全部覚えていれば、苦しくても整理はついた。中身が抜けて感情の残骸だけが居座っているから、どちらにも進めない。

何に怯えているか分からないまま体が動かなくなるのは、本人にとって理不尽極まりない。戦えない理由を説明できないから、周囲には怠けているようにも、臆病なだけにも見える。遺跡に戻る動機が「強くなったから今度は勝てる」ではなく「確認しないと先に進めない」になっているのは、この構造の当然の帰結だ。彼女は剣を取りに行くのではなく、2年前の自分を見に行く。

強化できないものの前で、レインは何ができるのか

この作品の主人公レインの能力は、あらゆるものに強化ポイントを付与できることだ。武器でも道具でも、好きなだけ底上げできる。その万能さが気ままなセカンドライフの土台になっている。

ところがリリィに欠けているものは、付与では埋まらない。記憶を強化することはできないし、空白を強化しても空白のままだ。追放系の主人公が持たされる能力は普通、あらゆる困りごとを解く万能鍵として機能する。そこに「この力では届かない相手」を置いたのは、このジャンルの中では珍しい選択だと思う。レインができるのは、彼女が自分で見に行くための足場を強化してやることだけである。そしてリリィを憎んでいるマーガレットまで同行を望んだ以上、遺跡で判明する事実は三人のうち誰かを確実に傷つける。真相が優しいものである保証はどこにもない。

「追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。」は2026年10月に始まった秋アニメで、現在第3話まで配信されている。dアニメストアでは火曜深夜、水曜0時30分に更新される。

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