「忘却バッテリー」を見て、こんなに胸を掴まれるとは思っていなかった。
野球アニメだから試合の熱さが見どころかと思いきや、この作品の本当の魅力はキャラクターひとりひとりが抱える葛藤にある。みんなそれぞれ違う壁を持っていて、でもそれぞれのやり方で前に進もうとしている。その姿が、ただただ熱い。
千早は身体の小ささという、努力だけでは簡単に乗り越えられない壁にぶつかっている。自分ではどうにもならないものと向き合いながらも諦めない姿は、見ていて胸が痛くなると同時に、純粋にかっこいいと思った。
藤堂のイップスは特に刺さった。先輩の試合でエラーをしたことがきっかけで、自分の動きをコントロールできなくなる。技術の問題ではなく、心の傷が体に出てしまうあの苦しさ。それでもグラウンドに立ち続ける藤堂の姿に、何度もグッときた。
要の記憶喪失という設定も面白い。かつての自分が積み上げてきたものを失いながら、それでも野球と向き合っていく姿。そして清峰が「要としか野球をしない」という一途さ。この二人の関係性は、この作品の大きな軸になっていると思う。
でもこの作品のすごいところは、そんな重たいテーマをギャグで包んでいるところだ。シリアスな展開の合間に笑えるシーンが自然に入ってくるから、重くなりすぎずに気軽に見続けられる。気づいたら感動して、気づいたら笑っている。そのバランスが絶妙だった。
葛藤を抱えながらも前に進んでいく登場人物たちの姿——それを見るだけで、なぜか自分も頑張れる気がしてくる。そういう力を持った作品だと思う。