ミミズを集めておじさんに渡すことで、リンクに入れてもらう——この導入だけで、いのりというキャラクターの全てがわかる。どうしてもスケートがやりたい。その一心で、できることを全部やる子どもの姿が、開始数分で胸に刺さった。
主人公の結束いのりは小学5年生。フィギュアスケートを始めるには比較的遅い年齢だ。周りはとっくにスケートを始めていて、いのりはスタートラインにすら立っていない。それでも彼女は諦めない。金メダリストになるという夢を、ただまっすぐに信じている。
そんないのりの前に立ちはだかるのが、母親の存在だ。「いのりには何もできない」という目で見られ、フィギュアスケートも諦めるよう言われる。親に否定されることの痛さは、見ていて胸が痛くなるほどリアルだ。それでもいのりは黙らない。自分には何もできないんじゃない、と自分の意見をぶつけていく。その姿の成長が、じわじわと涙を誘う。
そしてもう一人、この作品を語る上で欠かせないのがコーチの明浦路司だ。アイスダンスで全日本選手権に出場した実力を持ちながら、引退後は就職に悩む26歳。そんな司がいのりの情熱に触れ、「俺が、全日本選手権に出場できる選手にしてみせます!」と言い切る場面は、この作品屈指の名シーンだ。自分の経歴に自信が持てない不器用な青年が、いのりと一緒に本気でスケートに向き合っていく姿は、いのりの成長と同じくらい胸が熱くなる。コーチと選手が互いに成長していく関係性が、このアニメをただのスポーツ作品以上のものにしている。
誰かに否定されても、自分だけは自分を信じる——そのシンプルなことが、どれだけ難しくてどれだけ尊いか。見終わった後に、そう感じさせてくれる一作だ。
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