「ばらかもん」は、静かに、でも確実に心に染み込んでくるアニメだった。
主人公の半田清舟は書道家として都会でキャリアを積んできた人間だ。けれど、自分の書を批判した審査員に手を上げてしまい、父親の意向で長崎の五島列島へ送られることになる。最初はただの「罰」として始まった島暮らしが、半田の人生を少しずつ、でも確かに変えていく。
この作品が好きなのは、「大人になっても変われる」ということを正面から描いているからだ。半田は書道という狭い世界の中で生きてきた。評価されることが全てで、自分の価値観が正しいと信じて疑わなかった。でも島の人たちと関わる中で、そのフレームがひとつひとつ外れていく。島民たちは書道のことなんてよく知らない。でもだからこそ、半田の「普通」が通用しない場所で、彼は初めて本当の意味で人と向き合うことになる。
なるとみわ、たまとのやり取りが特に好きだった。子供たちは空気を読まない。思ったことをそのまま言う。その無邪気さが、半田の固まった価値観をほぐしていく。子供の一言にハッとさせられる場面が何度もあって、見ながら自分も「そうだよな」と気づかされることがあった。
五島列島という舞台設定も本作の空気感を大きく決定付けている。作者・ヨシノサツキの出身・居住地でもある長崎県五島列島の風景と方言が、作品全体にリアルな温かみと土着的な懐かしさを与えている。島の人々の距離感の近さと、その分だけ確実に誰かが見ていてくれるという安心感——そういった地方特有の人間関係の温度感が、都会で傷ついた半田の心を少しずつ解きほぐしていく。
書道を通した半田の変化を表現する方法も本作らしい。評価されることだけを目的に書いてきた書が、島の風景や人々との関わりによって少しずつ変わっていく。「上手い書」から「本物の書」へという変化を、セリフではなく作品そのものの変化で見せる構成が、本作の静かな奥行きを生み出している。なるというキャラクターは本作の絶対的な主役と言っていい。天真爛漫で空気を読まず、半田のことを大好きなのに容赦ない。この子の存在が本作のほのぼのとした雰囲気の源泉であり、最後に半田の心を一番深く動かすのもまた、なるなのだ。
多様な価値観に触れることで、大人でも変われる。それをこんなに温かく、笑いを交えながら描いてくれたアニメはなかなかない。
「ばらかもん」はヨシノサツキによる漫画で、「ガンガンONLINE」(スクウェア・エニックス)にて2009年から2019年まで連載、全18巻で完結。TVアニメは全12話、2014年7月から9月放送。dアニメストアなどで視聴できる。

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