見ていると、アンジャッシュのコントを思い出す。
A「この人は私のことが好きなんだ」B「あいつは俺のことが嫌いなんだ」——同じ出来事を見ているのに、二人の解釈がまったく違う。その食い違いが積み重なって、どんどん収拾がつかなくなっていく。「ゲーマーズ!」のすれ違いはまさにそれだ。毎話、全員が全員に対して微妙にずれた認識を持ったまま動くので、全体像を知っている視聴者だけが「そこじゃないのに!」と叫びたくなる。この気持ちよさが、このアニメの最大の武器だ。
主人公は雨野景太。ゲームが趣味のぼっち男子高校生で、特にこれといった特徴がない。そんな彼がある日、学園一の美少女・天道花憐から「ゲーム部に入らない?」と誘われるところから物語が動き出す。普通のラブコメなら「美少女に誘われたボッチが充実した学園生活を送る」という流れになるはずだが、景太はその誘いを断る。「ゲームの楽しみ方が違う」という理由で。この一歩目のすれ違いが、物語の全てのカオスの起点になる。
花憐は景太を「断られた」と思い、景太は「そういうことじゃない」と思っている。この認識のズレが、その後に登場する星ノ守千秋、上原祐、亜玖璃たちを巻き込みながら、雪だるま式に膨らんでいく。誰かが誰かへの誤解を解こうとするたびに新しいすれ違いが生まれ、解決しようとするほど状況がこじれていく。この「善意の誤作動」の連鎖が毎話のギアになっていて、止まらなくなる。
登場人物が全員悪人ではないのがポイントだ。誰も意地悪をしているわけじゃない。みんなちゃんと相手のことを考えて行動している。なのにすれ違う。気を遣えば遣うほど余計にすれ違う。その「良かれと思って」の連鎖がツボにはまるのは、現実の人間関係でも似たようなことが起きているからかもしれない。
花憐というキャラクターが本作の中心だ。学園一の美少女というポジションでありながら、景太を誤解しているせいで毎回アクションがちぐはぐになる。その振れ幅が大きいほど面白い。金元寿子の演技が花憐の「実はかなり焦っている」という内面を的確に表現していて、表情と言葉の温度差が毎話笑えて仕方ない。
星ノ守千秋も見逃せないキャラクターだ。落ち着いた外見と裏腹に、内面では激しく動揺していることが多く、その「表に出ない動揺」が物語のすれ違いをさらに複雑にしていく。石見舞菜香のツッコミ的な演技が、千秋の立ち位置を絶妙に表現している。
上原祐と亜玖璃のカップルも本作の肝だ。すでに付き合っているのに、互いに相手の気持ちを疑い始めて自滅していく様子が、もはや笑えないくらい笑える。完成されたすれ違いコンビとして、この二人の掛け合いだけで一本アニメが作れそうなレベルの密度がある。
「ゲーマーズ!」のすれ違いが他のすれ違いラブコメと違うのは、すれ違いそのものが「笑えるほど精巧に設計されている」ことだ。偶然じゃなくて、全員の思い込みと誤解が絶妙に組み合わさってすれ違っている。だから毎話の「そうじゃないのに!」という気持ちが、スッキリするどころか次話への期待になる。
「ゲーマーズ!」は葵せきなによるライトノベルで、富士見ファンタジア文庫(KADOKAWA)より全12巻で完結。シリーズ累計発行部数は100万部突破。TVアニメは全12話、2017年7月から9月にかけてPINE JAM制作で放送。dアニメストア・DMM TVなどで視聴できる。
すれ違いが気持ちよすぎる——「ゲーマーズ!」がアンジャッシュのコントみたいに面白い理由【感想・おすすめ】
リンク
💬 コメント
まだコメントがありません。最初のコメントを書いてみてください🐾
コメントを書く