中学生の頃に誰もが心のどこかで通り過ぎる、あの「黒歴史」をテーマにした作品がここまで感動的になるとは思わなかった。

「中二病でも恋がしたい!」の主人公・富樫勇太は、中学時代に「ダークフレイムマスター」を名乗った重症の中二病患者だった。高校入学を機にその過去を完全に封印し、普通の高校生として新スタートを切ろうとしていた。でもそこに現れたのが、邪王真眼の使い手を自称する現役中二病の小鳥遊六花だ。こうして黒歴史から逃げていた元中二病の少年と、今まさに真っ盛りの中二病少女の奇妙な同居生活が始まる。

最初は六花のことを「恥ずかしい」と感じていた勇太が、少しずつ変わっていく過程が本作の核だ。六花が中二病でいる理由には、家族の喪失という深い痛みが隠されている。その事実が明らかになるにつれて、「中二病を卒業させようとすること」が必ずしも六花のためにならないという気づきが勇太の中に生まれる。この変化の積み重ねが、ラブコメとしての笑いと、感情的なドラマの両方を成立させている。

六花というキャラクターは本当に特別だ。邪王真眼の演技は最初笑えるのに、その裏にある動機を知った後では全く違って見える。包帯で覆った右目を発動させる瞬間に、彼女の中にある「現実から目を逸らしたい気持ち」と「それでも前を向こうとする気持ち」が同時に見えてくる。内田真礼の演技もこのキャラクターを完璧に体現していて、六花の独特なしゃべり方と感情の振れ幅が毎話刺さる。

京都アニメーションの映像クオリティも本作の大きな魅力だ。中二病の「戦闘シーン」は六花たちの妄想の中での出来事だが、その映像表現が毎回本格的なファンタジーアクションのようなクオリティで描かれる。日常シーンのやわらかい色彩と、邪王真眼発動時の鮮烈な映像の落差が、六花の内面世界の豊かさをそのまま見せてくれる。このギャップが毎回気持ちいい。

凸守早苗というキャラクターも見逃せない。六花の従者として全力でそのヒエラルキーに従いながら、ぽんこつっぷりが毎回コメディとして機能する。上坂すみれが演じるあの独特な凸守口調は、聞いているだけで笑えてしまう中毒性がある。

丹生谷森夏、五月七日くみんという周囲のキャラクターたちも個性が豊かで、メインの二人を取り巻く関係性の温かさが作品全体の居心地のよさを作っている。特にくみんの独特なペースが場面のテンションを絶妙に和らげる役割を果たしていて、いるだけで空気が変わるキャラクターだ。

本作が他の学園ラブコメと違う理由は、「笑いの裏に確かな痛みがある」ことだ。中二病という言葉はネタとして使われることが多いが、この作品は中二病という状態に対して真剣に向き合っている。六花にとって邪王真眼は笑えるコスプレではなく、大切なものを守るための鎧だ。それを理解した勇太が選ぶ行動が、このアニメの感動の源になっている。

2012年の1期放送から、劇場版・2期・新作劇場版と続いてきたシリーズだが、TVシリーズ1期で描かれた勇太と六花の関係の変化は、それだけで完結した一つの感動的な物語として成立している。「普通」と「中二病」のどちらが正解かという問いへの答え方が誠実で、見終わった後に自分の黒歴史をちょっとだけ肯定できるような気持ちになれる。

「中二病でも恋がしたい!」は虎虎によるライトノベルで、京都アニメーション・KAエスマ文庫より全4巻で刊行。TVアニメ1期全12話(2012年放送)・2期「戀」全13話(2014年放送)はともに京都アニメーション制作。劇場版「-Take On Me-」は2018年1月公開。dアニメストア・Amazonプライムビデオなどで視聴できる。