くだらない。本当にくだらない。でもそれがいい。

「まったく最近の探偵ときたら」は、そういうアニメだ。笑いのレベルが高いとか、感動があるとか、そういう話ではない。ただひたすらにくだらないギャグを積み重ねながら、毎話気づいたらお腹が痛くなっている。それがこの作品だ。

主人公の名雲桂一郎は、かつて一世を風靡した高校生名探偵だった。どんな難事件も瞬時に解決し、メディアにも引っ張りだこの人気者だったらしい。らしい、というのは、それはもう10年以上前の話だからだ。現在の名雲は腰痛・老眼・知覚過敏を抱え、スマホも使えず、JKという単語の意味すら知らない、ただの冴えないおっさん探偵だ。
そこに押しかけてきたのが助手希望の女子高生・真白だ。見た目は美少女だが、ヤクザの事務所を一人で壊滅させるほどの怪力の持ち主で、謎の収納術を使って火炎放射器を体のどこかから取り出してくる。探偵助手を志してひたすら磨いてきた能力が格闘技と謎のサバイバルスキルしかない、完全に方向性を間違えた女の子だ。

この二人のコンビが毎話、本当にどうでもいい事件に挑む。「どうでもいい」というのは比喩ではなく、本当にどうでもいい。解決しても世界は何も変わらないし、誰も大して困っていない。でも名雲はそれを一丁前に「謎だ」と睨み、真白はそれを解決するために全力で体を張る。このすれ違いの積み重ねが毎話、くだらないのに笑えて仕方ない。
名雲の「かっこつけるが全然キマらない」という部分が特に好きだ。かつての名探偵のプライドで渋いことを言おうとするのだが、腰が痛くてうまく立ち上がれなかったり、老眼で手元が見えなかったりして、ことごとく台無しになる。決め台詞の直後に情けない事態が起きる流れが絶妙で、笑いのテンポが毎回気持ちいい。

真白もずるい。見た目が普通の女子高生なのに、発想や行動が根本的にずれている。解決策が毎回パワーで殴るか火炎放射器かという選択肢しかなく、その二択から選ぼうとしている様子が真剣な顔でやっているから余計に笑える。「普通に考えたらそうはならない」という行動を大真面目にやり続けるキャラクターは、笑いの純度が高い。

このアニメが他のギャグ作品と違うのは、「笑わせにきている感じ」があまりないことだ。二人とも本人たちは至って真剣にやっている。真剣にやっているのに全部ズレているから笑える。このズレの精度が作品全体を通して安定していて、飽きずに見続けられる理由になっている。
声優陣も本作の笑いを支える重要な要素だ。名雲役の諏訪部順一は、渋くてかっこいいボイスでどうでもいい台詞を言い続けるというパラドックスを見事に体現している。かっこいい声で「腰が……」とか「老眼で見えん」とか言われると笑いの破壊力が上がる。真白役の花澤香菜も、あの独特の声で全力でバカなことをやる真白を自然に演じており、二人の声の相性がこのコンビの掛け合いの面白さを底上げしている。

OPテーマを担当した岡崎体育も、作品の空気感にぴたりとはまっている。岡崎体育というアーティスト自体が「真剣にやっているのにちょっとおかしい」という文脈を持っており、本作の主人公コンビと見事にシンクロしている。

くだらないことをちゃんとやり続ける。それが本当に難しいことで、それをこれだけの密度でやり続けているのがこの作品のすごいところだと思う。深く考えずに笑いたい時に、これほど信頼できる作品はない。
「まったく最近の探偵ときたら」は五十嵐正邦による漫画で、「電撃マオウ」(KADOKAWA)にて2016年から連載中、既刊16巻。累計発行部数は90万部を突破している。TVアニメは全12話、2025年7月から9月にかけて放送。ライデンフィルム制作。dアニメストアなどで視聴できる。