吸血鬼がすぐ死ぬ。タイトルそのまんまで、でもそれがすべてだ。
「吸血鬼すぐ死ぬ」の主人公・ドラルクは、自称「真祖にして無敵の吸血鬼」だ。でも実態は、ちょっとしたことで灰になってしまう史上最弱の吸血鬼だ。日光はもちろん、ちょっとした衝撃で死ぬ。尖ったものでも死ぬ。にんにくでも死ぬ。何なら驚いただけで死ぬ。そして死ぬたびに灰になって、また復活する。この「死んで復活する」繰り返しが毎話のギャグの軸になっているのだが、その死に方のバリエーションと演出のテンポが絶妙すぎて、何度見ても笑える。
このアニメで笑えるのは、死ぬこと自体よりも、その死に方がいちいちコミカルなところだ。どんな死に方をするか、どんな顔で死ぬか、どんな声で「ああ…」と言いながら消えていくか——毎回演出のディテールが細かくて、笑いの密度が高い。同じ「死ぬ」という行為がここまでバリエーション豊かに描けるのかと感心すら覚える。
ドラルクのパートナーであるロナルドの存在も、このアニメの笑いに欠かせない。吸血鬼ハンターでありながら、相棒の吸血鬼が毎話すぐ死ぬせいで仕事にならない苦労人だ。ドラルクが突然死ぬたびに「また死んだ」という顔をするロナルドの表情の変化が毎回笑える。慣れているのに毎回微妙に疲れた顔をするのが、このキャラクターの魅力の核だ。
さらにドラルクのペットであるアルマジロのジョンが、地味にいいキャラをしている。基本的に何もしないのだが、時々全く関係ないところで存在感を発揮して笑いを生む。ドラルクとロナルドとジョンの三者の関係性が安定した面白さを生み出しており、この三人が揃っているだけで次の展開が楽しみになる。
本作の笑いが他のギャグ漫画と一線を画しているのは、「くだらなさ」の純度が異常に高いことだ。シリアスな展開に見せかけて落とす、という構造ではなく、最初から最後まで一貫してくだらない。くだらないことを全力でやる、という姿勢が作品全体を通じてブレない。この純度の高さが、読んでいて気持ちいい理由だと思う。
吸血鬼ものというジャンルへのリスペクトが随所に見えるのも本作の特徴だ。吸血鬼にまつわる様々な設定や伝承を丁寧に取り込みながら、それをギャグの素材として使いこなしている。「この設定を持ってきてギャグにするのか」という驚きが、毎話どこかにある。
登場する他の吸血鬼キャラクターたちも全員個性が強くて面白い。それぞれが固有の能力と個性を持ちながら、でも全員揃ってどこかおかしい。このレギュラー外キャラクターたちが毎話違う形で絡んでくることで、ドラルクとロナルドだけでは出せないバリエーションの笑いが生まれている。
声優陣の話も外せない。ドラルク役の鈴木達央と、ロナルド役の古川慎のコンビは、このキャラクターたちの掛け合いを毎話生き生きとさせている。特に古川慎のロナルドの「疲れた常識人」感は、アニメならではの魅力で、原作のテンポをそのまま音で体現している。
作者の盆ノ木至が体調不良で長期休載を経て2025年に連載を再開したことは、ファンとして本当に嬉しかった。これだけの密度でくだらないギャグを作り続けるのは、想像以上の作業だったはずで、帰ってきてくれたことへの感謝と、続きへの期待は変わらない。
笑いたい時に、くだらなさを求めている時に、吸血鬼すぐ死ぬは最高の答えになってくれる。
「吸血鬼すぐ死ぬ」は盆ノ木至による漫画で、「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)にて2015年から連載中、既刊25巻。累計発行部数は370万部を突破している。TVアニメは1期全12話(2021年放送)・2期全12話(2023年放送)。dアニメストアなどで視聴できる。
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