綺麗じゃない。でも、目が離せない。
九龍城砦をモデルにした雑多な街が、この作品の舞台だ。整然とした都市とは程遠い、ごちゃごちゃと積み重なった建物と路地。そこには人々の生活と、好きと、懐かしいが、ぎゅっと詰め込まれている。この街の空気感だけで、もうこの漫画は特別だとわかる。
日々の暮らしが淡々と描かれていく中で、ふと気づかされることがある。当たり前だと思っていた「日常」が、実はどれほど儚くて、愛おしいものなのかということだ。特別な事件が起きなくても、普通の一日が丁寧に描かれるだけで、胸の奥がじんわりとする。そういう漫画はなかなかない。
登場人物たちも、みんなどこかに傷を抱えている。過去に向き合いきれていないもの、現在に迷っているもの、それでも今日をちゃんと生きようとしている姿が、静かにかっこいい。派手な強さじゃなく、葛藤を抱えながらも前を向く姿の方が、ずっと深いところに届くことがある。
読み終わった後、自分の日常がいつもより少し大切に見える。そういう作品だ。
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