この作品は、できるだけ事前情報を入れずに見てほしい。それだけは最初に伝えておきたい。

「無能なナナ」は、絶海の孤島にある学園が舞台だ。そこには特殊な能力を持つ少年少女が集められ、「人類の敵」と呼ばれる存在と戦う訓練を続けている。クラスの中で孤立している中島ナナオの前に、ある日転校生の柊ナナが現れる——というところから物語は始まる。

ここまで読んで「よくある異能学園バトルもの」だと思っただろう。それが第一の裏切りだ。

このアニメの最大の魅力は「いい意味で何度も裏切られる」という体験だ。「こういう展開になるだろう」という予測が、毎話どこかで覆される。そしてその裏切りが「騙された!」という不快感ではなく、「そうきたか!」という気持ちのいい驚きとして積み重なっていく。脚本の設計が非常に巧みで、後から振り返ると全ての展開が伏線として機能していたことに気づく。この発見の連続が、止まらなくなる理由だ。

もう一つの見どころが、登場する能力者たちの多様な能力と、それへの対処の仕方だ。テレパシー、時間停止、念動力、予知——能力の種類は多岐にわたり、それぞれに使い方の幅と制約がある。この「能力の詳細設定」を駆使した知略戦が毎話の核になっていて、「次はどんな能力が登場して、どう切り抜けるのか」という楽しみが毎話ある。能力バトルものでありながら、力と力のぶつかり合いではなく、頭脳と観察眼を使った攻防が中心になっているのが本作の独自性だ。

柊ナナというキャラクターも本作の大きな核だ。明るく笑顔が絶えない彼女が、次第に複雑な一面を見せていく過程が、物語全体の感情的な軸になっている。大久保瑠美の演技がこのキャラクターの「表の顔」と「内側にある何か」を同時に体現しており、見れば見るほど彼女の台詞や行動の意味が変わって見えてくる。

中島ナナオというキャラクターも見逃せない。クラスから「無能」と呼ばれ孤立していた彼が、ナナとの出会いを通じてどう変わっていくのか。下野紘の演技が、ナナオの不器用さと誠実さを見事に表現しており、このキャラクターを通じて物語の「もう一つの軸」が動いていく。

小野寺キョウヤ役の中村悠一も印象的だ。表情を崩さず、独自の論理で動くこのキャラクターが物語にどう絡んでくるか——これも一つの見どころだが、詳細は書けない。見てのお楽しみだ。

アニメは全13話で、原作漫画の4巻までの内容が描かれている。1話ごとに謎と驚きを積み重ねながら最終話まで走り切り、余韻を残した形で終わる。見終わると「続きが気になって仕方ない」という状態になるのは間違いない。アニメだけでも十分に楽しめるが、まだまだ明かされていない謎が多く、2期の制作が待ち望まれる作品だ。

なお、原作漫画は2016年の連載開始から約10年を経て2026年7月に完結している。アニメで物語を気に入ったなら、ぜひ原作の続きも読んでみてほしい。アニメでは描かれなかった展開が続いており、全貌を知った時の感情はまた格別だと思う。

「無能なナナ」は、るーすぼーい(原作)・古屋庵(作画)による漫画で、スクウェア・エニックスの「月刊少年ガンガン」にて2016年から2026年まで連載、全15巻で完結(最終巻は2026年9月発売予定)。TVアニメは全13話、2020年10月から12月放送、制作はブリッジ。dアニメストア・Amazonプライムビデオなどで視聴できる。